生人形と松本喜三郎展

http://www.mus-his.city.osaka.jp/


日付け変わってもう終了日なんですが。
今日行ってきました。
太陽の特集『人形愛』で京都にあるという"狂女"の
人形を見たときからずっと本物の生人形をこの目で
見てみたいと思っていました。
見せ物として頭部と手足のみリアルに造型され、身体は
衣服こそまとっているもののぞんざいなままで、だからこそ
芸術としては永く評価されなかったという生人形。
しかし、本物はまさに息を飲むリアルさでそこに在りました。
何処を見ているのかは判らないけれども、確実に何かを捉えて
いるその目とその肌、刻み込まれた皺のひだ、わずかに開いた
口元から覗く歯や舌。和紙に1本ずつ、ときには本物の人毛を
用いたという頭髪まで、じっと見つめ続けていると、
目が合って文句のひとつでも言い出しそうなぐらいの人間が
何体も何体も。
その足はしっかりと地面を踏みしめ、その手は何かを掴んだり
触れていたり、とにかく今見つめた次の瞬間には普通に動き
出すに違いないと思わせるその形。
その圧倒的な技術力と表現力により存在感を与えられた
谷汲観音像は今回の展示のメインとして会場に足を踏み入れた
その場所に設置されています。
祈りを捧げるためのその観音像がこれだけの存在感でもって
そこに居るということは、当時のひとにも今の安置場である
お寺でもどれほどの救いになっているのかは想像に難く
ありません。ただ、残念ながら展示の都合上なのか、全身を
360度全てから見ることが叶わないので、見えうる限りの角度
から見つめてきました。
タイトルになっている松本喜三郎以外にも数人の生人形師の
作品が展示されていて、いずれも素晴らしかったです。
ただ、やはり見せ物だったという出自のせいか保存状態の
よくない、傷みがあちこちにあるものが多く残念でした。
精巧に出来ているだけに簡単に修復という訳にもいかないの
でしょうね。閲覧に来られている方々は割と年輩が多かった
ように思います。
ゆったりと余裕を持って展示されているので、ひとつひとつを
じっくりと眺めることが出来て良かったです。