維新派「キートン」


10月10日初日 G列36番

独特かつ効果的な維新派のラップ言葉もごく最小限。
物語は雨の中、どこからかやってきた少年が一件のひなびた
映画館に辿り着いたところから始まる。中には同じような
年頃の少年たちが居て、彼らに誘われるように少年はフィルム
の中へと入り込んでいく。


2次元と3次元、映写される平面と映されている世界や
登場人物。
それらを区切るかのように少年やキートンが縦横無尽に
画面を横切る。
その世界をより分かりやすく表現するために今回用意された
傾斜30度の滑り台状の舞台は圧巻だった。2次元でも3次元
でもない、まさに2.5次元の世界は横たわる平面から半身を
起こした状態でそこにある。
その世界から客席であるこちら側にまるでポップアップの
ように姿を見せる役者たちの非日常性は維新派ならでは、と
いうよりも維新派にしか出来ない力技であり、その条件下で
尚、演じ切られ表現された世界に感動した。

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維新派だから、という理由で彼らが在るというそれだけで
全て許してしまうというか評価をしない傾向というものは
あると思います。確かに私も観られるというそれだけで
嬉しいし、在ってくれと願い続ける存在ではあります。
あと、セリフと物語そのものに頼らないセットと身体表現に
重きを置かれた造りも観客の感性に委ねられる部分が多い
ために感想を言いにくいというところはあると思います。
私は上のとおり滑り台状の舞台という造りには感心しましたし
感動もしたのですが、同じような場面のくり返しや一場面の
長さには少々飽きたりしたところもありました。
特にくり返しの場面はスピード感を感じられず、その意味合い
そのものを考えさせられました。
今回は物語に出てくるキートンという存在が非常に面白かった
です。
少年が2次元と3次元の行き来をするのに付き合うだけでなく、
更にその外側の世界にひとり"在る"という造りで、それでいて
少年が観るフィルムの中で操り人形として観られている。
四角い箱の中の紙芝居を見る少年を外から眺める図、そうして
その紙芝居は眺めている当人が描かれている、かのような
多次元多層な世界観は目まいを起こしそうで、その世界を
具現化して見せてくれた今回の作品はとてもとても好きです。

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昼間は汗ばむ程の陽気でも、観劇中は冷えてきます。
デニム程度の畳んでしまえるような羽織るものを必ず!と
出来れば座布団代わりになるようなものを持参された方が
賢明でしょう。
上演時間は2時間30分ということでした。
屋台村が多数出店されており、美味しいものがたくさん
売られています。お腹を空かせて行った方がより楽しいです。