日本沈没

  • 日本のあちこちが迫真の映像表現で壊れていく様(エンターテイメント担当)
  • 日本という国の成り立ちが政治レベル、国際的になくなっていく様(思想担当)
  • 日本に住む人々の個人的関係性が極限下でそれでも保たれ、繋がり生まれていく様(感動担当)
  • 日本沈没が描いていたものは多分、上の三つです。
  • このうちひとつめの映像表現はかなり偏りはありますが、それなりに鬼気迫るものがあり、怖さを実感できる部分は多々ありました。
  • ふたつめは何だかお約束な展開でした。つまり想像の範囲を超えるものはほとんどなく、政府の措置に対する世間の反応や、対応として示された自衛隊を含む救援活動の様子全般を見て感じたことなんですが。ああ、そういえば国宝を手土産に大臣クラスの人々が他所の大国に逃げようとする下りは妙に具体的だったので面白かったです。あんまり笑い事じゃないんですが。この思想担当の部分で山ほど出てきた自衛隊所属の船の名前をいちいち表記してあるのが、沈黙の艦隊みたいだと思いました。
  • 三つめの実際そうなったときの登場人物の反応というものが映画の中であまりに淡々としていて、悲しみや嘆きはそれなりには描かれていましたが、怒りや反発といったものがほとんど表現されていなかったのでピンとこなかったのかもしれません。"一気呵成に沈んでいく"という時にそんな余裕はないと言われればそれまでなんですが。
  • 三つめの続きとしては何度も書きますが感情表現が全てにおいて淡々としていたのがどうにもなと。小野寺(クサナギ)と玲子(柴咲)の心の距離が縮まるまでとか、田所教授(豊川)と小野寺と同僚である結城(及川)の結束感はもっとベタに密に描写して欲しかったです。少なくとも私にはふたりが惹かれあう理由も信頼しあっている小野寺と結城の絆も感じられませんでした。
  • ……とか書いてたら月刊シナリオに掲載されているやつにはその辺りが本当はもうちょっと描写がされているようですね。あらら。
  • つまり編集に難ありということなのかしら。
  • 私なら冒頭に田所の計画を出しちゃって、それを中心にお話を進めますがそれじゃありがちなのかしら。
  • ところで私はクサナギさんファンなので彼の演技とか表情とか、何かひとつでも新しい発見(私の中で)があるとオッケーというのがあるのですが、この作品に於いては眠る玲子を見つめる顔に今まで見たことのなかったクサナギさんが居ると思いました。
  • そんな訳で雑誌とかムックとか買ったもののネタバレになるので見てなかった記事とかをこれから貪り読むことにします。角川から出たPHOTOBOOKはクサナギさんなのに全然クサナギさんが写ってなくてぜーんぶ小野寺さんなのでとても不思議な写真集ですね。面白いですが。