• サナギさんのことを取り上げた野性時代と雑誌連載をまとめた単行本が出た。野性時代に関してはまったく知らなくて、どうやら良いものらしいと聞いて入手。実際良かった。840円もしたけれど。
  • 野性時代は10年以上前に家族が何でか定期購読していてその頃とは全然違う全体にミーハー臭というか、浮かれた雰囲気の雑誌になっていた。ダ・ヴィンチっぽいというか。一応小説誌のはずなんだけど概要のみって感じがして。
  • 肝心のクサナギさんの記事は単行本に関連したクサナギさんの人となりを追おうといったような構成になっていて、何というかここ2年ほどで更にしゅーっと収縮され、余分なものを削いだ感のあるクサナギさんは受け答えとか今思っていることなどを語っていても全てに余裕があって嘘がなく、淀みもなかった。なので読んでいると何だかお坊さんか宗教家のようなある種の境地に立ったひとの言葉を聞いているようで、ちょうど出た件の単行本がその過程を現したものだと思うと色々感慨深い。自分でもそういう受け答えをしていることに何かテレがあるのかワガママだったり勝手だったりする自分も居るとは言っているのだけれど、そうは見えない。そういう答えが謙遜にすら思える。
  • 単行本最初の辺りを読むと洋服と食べ物とちょっと仕事の話をしているのが、最後の辺りはもう仕事の話がほとんどで、ああ、そういえばこのひとは物欲魔人だったなあと懐かしくも苦笑を浮かべたりして、そんなときの自分はまるで彼の身内か何かのつもりかと我に返ったり。
  • 今もあの頃と変わらない部分もたくさんあって、でも変わっていく部分とか伸びていく部分が色々あってそんな風にひとりの人間を見つめていくという不思議のことを考えたりした。
  • ……だって他人なのにね。一生会うこともないんだろうにどうしてこのひとのことを10年以上知ってるんだろうね。