MIDSUMMER CAROL ガマ王子対ザリガニ魔人


7/30 4列 16番


人を人とも思わない傲慢で自分勝手、思い通りにならない
ことなんてない人生を歩いてきた老人と、両親と共に乗って
いた車の転落事故によりひとり生き残った少女。
しかし、少女は事故で頭を打った影響でその日一日限りの記憶
しか保てないという障害を負っていた。毎日が少女にとっては
自身の誕生日であり、両親から贈られたプレゼントである
絵本を飽きることなく読み返している。病院で少女と出会った
老人はそれを知らず、誤解から少女の頬をぶってしまうが、
次の日、記憶がないはずの少女は老人が触れた指を覚えていた。
そのことから老人の心に忘れ果てていたいたわりや思いやり、
人を愛するという気持ちが蘇るが ─────。

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びっくり直球。
皮肉っぽくもなくいじわるでもなく、ましてや恐ろしさや
気味の悪さや後味の悪さもない後藤ひろひと脚本の愛と涙と
挫折と希望の物語。
テーマがはっきりしていて、物語の何処を誰が担当しているの
かも明確なので分かりやすく万人向けで後藤さんが仰るところの
『ビジネス演劇』としてほぼ完璧でした。
その明確さゆえに主役として筆頭に名前の上がっている
伊藤英明長谷川京子の未熟さというか、浅さ、薄さ、ヌルさが
露骨に出てしまっていて、後藤さんのいじわる部分はここに
あったのかなと邪推すらさせるものがありました。
しかし逆に言えばそれは彼らがきちんと演じればすぐに分かる
ように造られていると思ったので、複数回ご覧になる機会のある
ひとはその成長なり変化なりが楽しめるのかもしれません。
彼ら以外の役者さんはどなたもとても良かったと思います。
回数をこなしている公演だけにある種の『キレ』が出来て
しまっているようで、余韻を残してほしいところがサッと
終わってしまう印象を受けた箇所もあったのですが、それは
感じ方次第かなと思いますし。
上にも書きましたが何処を誰が担当しているのかが明確ですので、
遊べるところの遊び方で役者さんの個性が感じられるのが楽し
かったです。特に山内圭哉さんと瀬戸カトリーヌさんは素晴らし
かったです。

人の生死や愛とか挫折、希望を扱う話は何処かに書いたひとの
個人的感覚や感情が入ってしまうことが多いと思いますが、
このお話にもそうなのかなと感じさせるところがありました。
わたしはそれに打たれて一部では泣いてしまいましたが、
二部では泣けませんでした。構成上しょうがないのかも
しれませんが分けないで最後まで見たかったような気もします。

よく出来たお話だったと思います。観られてよかった。