飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ
- 文化庁芸術祭出品ってのはいわゆる御墨付きってやつですかね。
- じゃなくて、御墨付きをもらいたい、ってことですかね。
- まぁいいや。
- テーマ的にあまり得意な方向のものではなかったんですが、予告を観ているうちに今まであまり見たことのなかった吾郎さんの表情がいっぱいあったので、興味をひかれ観ることにしました。
- 最後まで目を逸らすことなく観ることが出来ました。テーマが直球なだけにキツいかなと思っていたのですが、脚本があっさりしていたのと、吾郎さんがギリギリまで、それこそ倒れるまで前向きな姿勢を保ち続けた主人公をきちんと演じていたので見られました。
- ひとりの人間がどう生きて、生きたかったか、というものを描くとき、そこにやはりエゴというか、欲望というか、剥き出しの感情やら感覚があって、それをどう表現するのかというのは難しいものだと思います。
- それをこのドラマでは主人公が感じた感覚として夢の中の光景というものを上手に使っていたのがクッションとして活かされていたように思います。
- そこで家族や美しい風景に囲まれ、何の問題もないように動き、笑う主人公を演ずる吾郎さんの軽やかさとか、現実世界に於いて、出来るだけ永く生きたいと願い、叶わないであろうことを悔やむ砂を噛むような表情や呟くような言葉、そして涙。
- そこにあるとんでもない高低差を肌で感じたそのときに、死の深さと生の崇高さを味わったように思ったのです。
- 死をテーマに扱うドラマは脅迫めいた問いかけがある場合が多くて、それも苦手な理由のひとつなんですが、このドラマに関してはそういうところを私は感じなかったのでその辺りも良かったです。
- いしだあゆみさんが演じた患者がその象徴だったように思います。最後まで折り合うことなく寂しさを匂わせつつもそのままだったという辺りが。
- それにしても車が奇妙に目立ってて気になりました。黄色いワーゲンとあともう1台のも。