ダブリンの鐘つきカビ人間@シアタードラマシティ

  • 20日マチネ12列15番
  • パルコ版再演。主演の片桐仁さん目当て。初演時にも気にはなったのだけれど行かず終いだったので今回が初見。
  • ノートルダムの鐘+美女と野獣ナイロン100℃の薔薇と大砲という作品が被る。奇病がまん延する閉鎖された街に住む人々、その中でも最も外見が醜くなる病にかかった心の美しいカビ人間と思ったことと反対のことしか話せない病にかかった少女の心の交歓を中心に街の人々の暮らし、更には街を牛耳ろうとする有力者たちの企みを折り込んで、そこに迷い込んだ現代の若者も巻き込みつつ物語は展開する。
  • ファンタジーという触れ込みではあったけれど、特にそういう風には感じられなかった。剣は出てきたけれど、奇病というのが別にそれほど重要な要素ではなかったからかも。病気そのものも皆バラバラだったし。
  • カビ人間が元は外見が美しく心根の汚い若者で、それが病気になったことにより逆になったというその描写がなく、更に思ったことと逆のことしか口に出来ない少女のその病を知らずやり取りを通して恋心を抱くカビ人間がやがて真実を知るというシーンもなかったので、結果として成り立ちと関係性が希薄な印象しかなく、正直なところ主演であるはずの片桐さんの印象はかなり弱かったというのが残念。
  • ただ、その少ない中にも片桐さんが演ずることによりカビ人間の心根の優しさや繊細さ、そうして悲しさというものは出ていて、その儚さというものが作品全体に美しい透明感というものを与えていたとは思う。その透明感をファンタジーというのならそれはそうだろう。
  • それにしても豪華な脇役陣。その中でも山内圭史さん、池田成志さん、橋本さとしさん、若松武史さん、そして中山佑一郎さんの印象が特に強かった。
  • 山内さんと池田さんに関しては物語上もさることながら、くすぐりというか笑わせるシーンでのやりとりが素晴らしく、橋本さんはそれにプラスして物語の上での立ち回りも含めて見どころが多かった。若松さんと中山さんはその配役上での演技にひかれた。これだけの面子がいっぺんに見られて、しかもそれぞれに持ち味が活かされる脚本や世界観というものはなかなかないと思うので、改めて後藤脚本の間口の広さには感心させられた。
  • その他のキャスト陣にもそれぞれに見どころはあって、全体として贅沢で十二分に満足出来る作品だったと思う。
  • ……今度はもうちょっと片桐さんが目立つ作品に目立つ役で出て下さるといいな、とか。