新選組!


山崎烝というひとの存在は新選組!に於いてとても
重要だった。その在りようは例えば、このドラマの
オープニング映像。正面から向かってくる隊士たちの
その勇ましい顔や姿形ではなく、その足元や後ろ姿と
いった彼らが確かに在った、という人間らしさの
輪郭を彼の存在が担っていたと思う。
彼は入隊時に土方や山南に自分の顔を覚えていないと
指摘して入った。そのときの土方たちの顔はまさしく
虚を付かれたといった表情で、その瞬間にこの
物語に於ける山崎の立ち位置は決まったのだ。
山崎はそれから新選組内の様々な出来事を内側から
見つめ続けてきた。土方や近藤に何かを頼まれて
『喜んで』と応じる彼のことを誰もが認知していく
のはしかし、あくまでもじっくりと緩やかだった。
三谷脚本が彼の行動を細やかに描いてきたのには
表立って動く近藤や土方の考えをフォローする
役目として重要だったというだけでなく、彼という
立場の存在を忘れず描写していくことで新選組
全てに奥行きが生まれるからではなかったか。
その彼が今日の話で死んでしまった。
その最期はあまりにあっけなく、あっさりとしていた。
死そのものまでがひっそりと目立たないようなもの
だったのが彼らしかった。
しかし、とても寂しいものだった。